餅つきのすべて

silk1996年に「自分のホームページ」というものを初めて作ったときにネタにしたのが「餅つき」なのですが、当時あまりそういうページが無かったためか、メディア取材を受けたりラジオに電話出演したりして、一個人として、Webのパワーを実感したものでした。その後サーバを移行したり、ブログに体裁を整えたりしながら、延々と同じ内容でアップしっぱなしだったものを、あるときに「もーええだべさ」と落としたのですが、まだ「餅」とか「餅つき」で検索されて来られる方がチラホラおられて、せっかくお越しいただいて404ページをご覧いただくのもなんですので、CSSなどのデザイン外したプレーンな情報だけにして再録アップしてみました。文章も写真も1997年1月のままですので、ちょっと恥ずかしいのですけど、拙文が少しでもお役に立てればうれしいです。



 もーいーくつ寝ると.....。子供の頃は心待ちにしたお正月ですが知らないうちにまた一つ年をとるわけです。ところで、お正月といえば、日本人ならやっぱり「おモチ」。我が家では、毎年12月30日に親戚が集まって「餅つき」を行います。昔ながらのキネとウスで、それぞれの役割をこなしながら老若男女全員で新しい年を迎える準備に汗を流します。これが、キツイけど面白くて、子供達も大喜びの年末恒例イベントとなっています。見ていただく時期によってはズレてしまいますが、僭越ながら「正統・日本のお餅つき」を解説させていただくことにしました。


基本的な道具
the basic tools
 これがなければ始まりません。 ご存じキネとウスです。ウスは、木のヤツと、写真のような石でできたヤツの2種類がありますが、僕は子供の頃から石のウスしかみたことがありませんけど地域的なものなんでしょうか?ちなみに、この写真のキネは、僕の義父の手製です。(今は引退しましたが、彼は大工さんだったので....)右側にあるのは、介添え役がつかう「水入りボール」です。
 silk
餅米の様子
mochi rice before making
餅米は、蒸す前に、こんな感じで水に漬けておきます時間的には8時間から12時間程度です。大体、餅つき本番の前日にはお母さん連中が、大量のお米を洗って水に漬けておくのが習わしです習わしですから、あまり疑問に思ったことないんですが洗った餅米をすぐ蒸すと、何か不都合があるのかなあ....。
 silk 薪割り
wood-chopping
 餅米を蒸すためのストーブに使う薪を割ります。「斧(オノ)」で割るんですが、この斧って最近ホントに見なくなりました。昔は、一家に一丁(一本かしらん?)あったような気がするんですが、気のせいか?それともウチが大阪ディープサウスだったせいか?いずれにしろ、薪割りをするおじいちゃんという、心和む図です。

 silk ストーブ
the stove
 このストーブの雰囲気が、何とも言えません。今流行の「輸入住宅2×4アーリーアメリカン!」みたいなモデルハウスには暖炉や北欧ストーブがリビングに飾ってあるのが常ですが、そういうのとは若干テイストがズレてて、かといって「日本製」という感じでもない。しいて表現するなら「大きな大陸の夕日が見える寒い大地に立つ、 満蒙開拓団の村落にある民家で使ってたストーブ」というイメージ....。深いモノを感じます。(どこで売ってたんやろ?)
 silk 蒸し器
the steamer
 で、そのストーブの上に三段に重なってるのが、蒸し器。これで約一晩漬けておいた餅米を蒸します。蒸し器ですから、一番下には水が入っていてその沸騰した蒸気で上3段の餅米が蒸しあがるわけです。(当たり前か)一つの段には「一升(1.8リットル)」のお米を蒸すことができて、この一段ずつを、蒸しあがったものから、ウスに移してツイていくわけです。
 silk 蒸し立ての餅米
steamed mochi rice
 ウスに移される寸前の、熱いアツい蒸し立て状態です。これを、ウチの場合は約3メートル離れたウスに素早く移して、いよいよペッタン大会の始まりです。

 silk キネでコネます
smash with pestle for mochi
 言っても、いきなりおもむろにツキだすのはトーシロというものです。一粒一粒がキラキラと光る蒸したばかりの餅米を、やさしく、しかし強く、キネの先っぽで、グイッぐいっと、押し込むようにコネてやりますこうすることにより、米が柔らかくつぶれてきて一人前のモチになれる状態になるのです。(ツクよりも、このコネるのが、実はシンドかったりします)
 silk そしてツキます
and making mochi
 あとは、ただ、ツクのみです。今回(1996年末)は、全部で18ウスつきました。 そのうち僕自身は7つ位ツイたのですがこれは近年なかった重労働でした何がキツイかというと、腰とか腕とかでなく「手のひら」。 こすれて痛くて握力がなくなってくるのです.....。 日頃どれだけ、手のひらを使ってないかという事を痛感しました。右側の介添えは「水加減の誘惑」との戦いです。モチが熱いのと粘りけでコネにくいのとでつい水を多くつけたくなるのですがあまり水を含ませると、ツキあがったときにベチャベチャになってしまいます。水を断ち切る、これが介添えの極意です。
 silk 牛舌もツキます
with shrimp version
 ウチの地方では、新鮮な牛舌を丸ごとモチと同じようにツイて食べる習慣があります....。というのは真っ赤なウソで、これは真っ赤になったツキ上がり寸前の海老モチです。ある程度ツケてきた段階で、干した小海老を混ぜこの海老を一緒につぶすようにツキ続けると、このようなきれいな色の海老モチとなります。個人的には、あんまり好きではない(つきたては結構イケますが)のですが、バリエーションとしては欠かせないおモチです。

 silk コナをまぶします
over it with wheat flour
 つきあがったおモチは、すぐにこのような「すし桶」や「もろぶた」に移しまず米粉もしくは片栗粉をまぶして、その後の整形作業をしやすくします。モチを手で持って移すのですが、何せツキたてですからとにかく熱い!先程の「ツキの段階」で、介添えが水を使いすぎると、芯のないヘニャヘニャのモチとなってしまい、その熱さもあってわずか3ー4メートル持ち歩くのも大変な状態となってしまいます。我が家の場合ウスからオケに移す作業以降は伝統的に女性の担当となります。小さな子供達が立派な戦力として一緒に手伝えるのもこの段階からです。
 silk 食べ頃にちぎります
tear it off, easy to be eaten
 おおきな塊のモチを、老若女女が取り囲み、みんなでちぎってまるめて、小餅にしていきます。そのままの白餅だったり、中にあんこを入れたりといったバリエーションはご存じの通りですが、この「ツキたて&ちぎりたて」のモチを、おろし醤油で食べるというのが、結構逸品でイケるんです。安倍川や海苔巻きもいいのですが、つきたての醍醐味は、やはり「おろし醤油バージョン」にあると思います。ちなみに順序としては、お正月の主役「鏡餅」を一番ウスでつくってから、写真のような小餅なんかをつくります。
 silk 長モチもつくります
some becomes a long version
 箪笥長持ではなく、うすく切って調理するための長モチです。(くだらん?)この写真は先ほどの小海老入りを長餅にしたものです。海老入りの餅をうすく切って焼いて食べるとオイシイ....というイメージが確かにあるのですが、個人的にはあまり好きではありません。イメージするほど美味しくないというのが正直なところでこの原因は「つきかた」か「米」か、はたまた「味覚」か..?煎餅は好きなんやけどなあ。
 silk 鏡餅の誕生!
this is a kagami-mochi
 とかなんとかやってるうちに、餅つき大会も無事お開きとなり鏡開きまで床の間に鎮座まします鏡餅も、立派に飾られたのでした。まあ、地方によってチョットくらいの差はあるかも知れないけど、日本の餅つきは、やっぱり面白い。願わくば、今後も毎年ずっと続けて恒例でやっていきたいものです.....。



おかげさまで、その後も毎年餅つきは続いておりまして、ただ、寄る年波には勝てず、最近は2ウスがいいところなのですが、やっぱり日本の餅つきはいいもんです。